秋の鎌倉

久しぶりに、ホント久しぶりに鎌倉です。

 

修学旅行の小学生の黄色い声と共に、大混雑の小町通りをぬけ、21号線を北鎌倉へ向かい建長寺を過ぎてすぐの、長寿禅寺に初めて行ってきました。ここは春と秋の数か月間の金土日と祝日にしか拝観できない、季節・曜日限定のお寺だそうです。そして雨天は中止だとかで、今回は雨が止んだ後の金曜日でしたので、偶然にも拝観することができました。急な階段をのぼり茅葺の門をくぐると静かな別世界が広がっています。四方の小さな山が近景にあって、鎌倉のあの喧噪が嘘のような静けさです。小さなお寺の小さなお庭は、武家の地鎌倉には珍しい、何故かお公家さんのにおいがします。

庭木の足元には、繊細な苔たちが幾重にも重なり、この空間全体の音と光と空気までもを、コントロールしているかのようです。参道の敷石も苔も木々も美しく清められていて、きっとここでは拾い清める作務がされているのだろうと、、、四つん這いで五指で繰り広げられるであろう丹念な作務を、想像してしまいました。人の手指と自然がともに造り続けているであろう庭です。

 

座敷に座り、開け放たれた窓を臨むと、一服の絵を観るようです。時間がゆっくりと過ぎてゆきます。

静かです。目にできるものは座敷から見える庭だけなのに、不思議と何故か目に見えない沢山なものたちが感じられます……。

気持ちがいい、ただただ気持ちがいい。

 

ふと長押に目を移すと、一枚の書額が掛かっています。

 

昼尚暗い深い林の中にあって 道を人に問うものは 又人に依って道を失うことがある 

静かに目をとじて 自ら開拓するものには 道は永遠に明るい     瑞龍僧堂 浦雲 

 

とあります。

この歳になっても、まだまだ迷う事ばかりだけれど、命の続くかぎりは、自らの道をゆっくりと元気に歩いてゆきたいと思う。

今はもう少し生きて、ただただ作陶し続けたいだけ………。